Trinity Tempo -トリニティテンポ- ストーリー


「えっと、今回皆さんと集まってお話をする機会ができたんだけど、初対面の人も多いから、二年生の私と鮫坂さんでなるべくスムーズにお話できるように進行させてもらうわね」
「…………まかせた」
「えええ!? 鮫坂さん……? あの……が、がんばります……!! せっかくの機会だから、普段悩んでることとか困ってることを相談して少しでも解決できればって思ってるんだけど、皆さん何かあるかしら?」
「……えっと……」
「あはは、初めての人が多いと緊張しちゃいますよね。じゃあ、かれんから相談してもいいですか?」
「ええ、それじゃあ芳野さんから」
「えっとね。ブーケはかれんとさえちーがダンスを始めたばかりで、経験者がすみれちゃんだけなんです。いつも教えてもらってばっかりだから、すみれちゃんの負担になってないかなぁって少し心配です」
「そ、それだと私も……。私、身体は大きいのにダンスの振りが小さくなりがちで……美柑お姉ちゃんやまいまい――苺香ちゃんに何度も同じことを訊いちゃったりしてます……」
「わかるわかる。私も一年生の時は先輩たちに囲まれてダンスしてたから質問することが多くて。あんまり訊き過ぎると迷惑かもって思っちゃうわよね」
「……あの。昔……ダンスを始めたばかりの頃、私も有瓜ちゃんに訊いてばっかりだったんですけど……そのとき有瓜ちゃんが『人にダンスを教えていると自分のダンスともう一度向き合えるからためになる』って言ってくれて……少し、安心しました」
「正宗さんの言うとおり。教えることで改めて気付くことってたくさんあるから、きっと水川さんも鳴宮さんのお姉さんも、負担になんて感じてないと思うわ」
「そうなんですね。すみれちゃんもそうだといいなぁ」
「美柑お姉ちゃんと苺香ちゃんも……」
「………大丈夫」
「えへへ、葵ちゃんも須藤さんも、ありがとうございます! ――柚葉ちゃんはチームにお姉さんがいるんだね! かれんのお家はおにいちゃんだけだから一緒に踊ったりなんて想像できないなぁ」
「う、うん。ずっと昔からなにをするのも一緒で、私がいっつも真似っこばかりしちゃってるの。……本当は、そろそろ姉離れしないといけないんですけど……」
「……いつも一緒なんて羨ましい……(ボソッ)」
「うちも年の離れた弟がいるんだけど、昔はおねーちゃんおねーちゃんって甘えてきて可愛かったのに、今は生意気言うし、私に向かってババアなんて言うときもあるのよ」
「あはは、仲良しさんですね」
「でも、やっぱりいないと寂しいし、頼られたりすると嬉しいの。だから鳴宮さんも、急いで姉離れしなくちゃなんて考えなくていいんじゃないかしら」
「かれんのおにいちゃんも全然妹離れしてないけど、おにいちゃんがいつものおにいちゃんみたくなくなっちゃったら寂しいかなぁ」
「うんうん、そうそう。あんまり気にしなくても大丈夫よ、鳴宮さん」
「…………大丈夫」
「あ、ありがとうございます……!」
「若干のデジャヴを感じるわ……。それじゃ次、正宗さんはどうかしら?」
「えっと、私の悩みというか私のチームの悩みなんですが、お恥ずかしいんですけど、チームにちょっとしたたかな人がいて……その人ばっかり褒められるんです……」
「したたかな人、ですか……?」
「はい。有瓜ちゃ、リーダーが振付で悩んでいたことがあるんです。だから私も力になりたくて意見を言ってみたんです。そうしたら……」
「……そしたら?」
「声が小さくて、聞こえなかったみたいで……。その後、もう一人のチームメイトが同じ事を言って褒められていて……」
「葵ちゃんはその尊敬するリーダーに褒められたいんだねぇ。褒められるのって嬉しいもんね」
「……はい」
「でもそれって正宗さんのアイデアが正しかったってことよ。だから次は自信を持って言ってみたらどうかしら! 長谷部さんにもきっと伝わると思うわ」
「そうですね……。ありがとうございます。頑張ってみます」
「それじゃあ次は~。須藤さんはお悩み、何かありますか?」
「ん~、悩みっていうわけじゃないんだけど、やっぱりどうしたらダンスが上手になるんだろうっていうのはずっと考えちゃうかしら」
「……ダンス、上達したいです……!」
「蒼牙の皆さんは普段、どんなレッスンをされてるんですか」
「……べつに。タイガとリオナといっしょに、頑張る……あと、息抜きもちゃんとする」
「特別なことはしていないってことかしら? そうよね。簡単にダンスが上手になるお薬があるわけじゃないものね」
「練習あるのみ、なんですね……そ、蒼牙の皆さんは、チーム練習と個人練習だと、どちらを重点的にされていますか……?」
「…………どっちも」
「そ、そうですよね! ありがとうございます……!」
「……………………喋るの、つかれた」
「ええええ!? あまり喋ってないわよ鮫坂さん!? 次は鮫坂さんの番だけれど……」
「…………悩み。ダンス以外、面倒。なにもしたくない」
「今でも十分省エネだと思うけれど……」
「踊ってる時は格好よくてクールなイメージですけど、普段は意外とおっとりしてるんですね」
「さえちーも、蒼牙さんのダンスはパワフルですっごくかっこいいっていつも言ってます!」
「…………(ポチポチ)」
ピヨピヨ♪
「……あ、ごめんなさい! マナーモードに出来てなかったです……。私のトリテンッターの通知が鳴ったみたいで……あれ? 鮫坂さんのつぶやき通知が……」
『わーい! ダンスがカッコいいって褒められちゃったよ~! うっれしーいθ~∇~)=θ☆スパパパーン』
「――こういったギャップもお持ちなんですね」
「鮫坂さんはいろんなことを発信されてて、いつもすごいって思ってます……!」
「トリテンッターって、いろんな人のこととか新しい情報を知ることができて面白いよねぇ。あの、鮫坂さんのアカウント、フォローさせてもらってもいいですか?」
「………ん」
「私もぜひ! 皆さんも良かったら繋がりましょう! といっても私は日常の他愛ないことしか喋らないんだけど……」
「須藤さんがアップしてくれる晩ごはんの写真とかすっごくおいしそうだから、いつも楽しみにしてます! かれんも自分で作ったお菓子とかアップしたりするよ」
「皆さん、いろいろアップしたりするんですね。私の画像フォルダって有瓜ちゃんばっかりだから、上げられる画像がないなぁ……。今度、ダンスの練習風景とか撮ってみようかな」
「私もたまに他のチームの練習風景、見たりします……。とても参考になります……!」
「<チェック>とかもらえると、いいねって言ってもらえたみたいで嬉しいよねぇ」
ピヨピヨ♪ピヨピヨ♪ピヨピヨ♪ピヨピヨ♪ピヨピヨ♪ピヨピヨ♪ピヨピヨ♪ピヨピヨ♪ピヨピヨ♪ピヨピヨ♪
「皆さんの携帯から一気に通知音が……」
「……えっと、鮫坂さんからの怒涛の<チェック>と<拡散っ!>通知ですね……」
「あ、私の方にもたくさん<チェック>が! ありがとう鮫坂さん! ダンスの事は勿論だけど、そのほかのこともトリテンッターでお話できるといいわね」
「……いろんな情報、まかせて」
「わぁ、楽しみだなぁ! みんな、それぞれ住んでるところが遠いから普段会えないけど、いろいろお話させてもらえると嬉しいです」
「よ、よろしくお願いします……! 四国に来ることがあったら言って下さい。美柑お姉ちゃんと苺香ちゃんとで案内します」
「東海地方にもぜひ。私のリーダーを紹介させてください」
「なんだか旅行に行きたくなっちゃうわね。ふふ。みなさん、これからもよろしくお願いしますね」
「よろしくお願いします!」
「……よろ」

–END–

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