Trinity Tempo -トリニティテンポ- ストーリー


「オーッホッホッホ! みなさん、よくお集まりいただきました。このわたくし、九条院惺麗のお悩み相談室、始まりますわ!」
「いえーい! どんどん、ぱふぱふー!」
「この相談室ではみなさんから寄せられた悩みをまるっと解決。この九条院惺麗に解決不可能な謎などありませんわ!」
「すごーい! ぱふぱふー!」
「フフフ、以前に桜映の悩みを解決してからというもの、わたくしは自身のアドバイザーの才能に気づいたのですわ。あれからさらに磨きをかけたアドバイス力はぐんぐんとこいのぼり……たきのぼりでしたかしら。ああ、完璧なわたくしのアドバイス力は完璧に、パーフェクトですわ!」
「惺麗ちゃん、カンペ見ないでしゃべるとぼろが出るよ?」
「あら失礼。気を取り直して、では早速一人目のお悩みパーソン、カモンですわ!」
「エントリーナンバー1番、ペンネーム『ストーカーよくない』さんからです。『私はダンスチームに所属しているんですが、うちのリーダーにつきまとう迷惑な人がいます。どうしたらつきまといをやめて私の命令を聞くようになるでしょうか?』 ……ふむふむ。ストーカーはよくないよねー困るよねー、近づかないように捕まえてほしいよねー。惺麗ちゃんならどうする?」
「簡単ですわ! 一緒にダンスをするのです。そうすればわたくしと晶のようにいつの間にか『フフフ』『フフフ』と不敵な笑みをかわせる仲になること請け合いですわ!」
「えー、追伸。そういう遠まわしな方法じゃなくて、九条院の力でさっくりやっちゃってほしいなぁ、だそうデス!」
「九条院とはわたくし、わたくしのアドバイスこそ九条院家のアドバイスですわ。『ダンスで和解案』で、わたくしファイナルアンサーですわ!」
「そっか、惺麗ちゃんはダンスを絡めたら転がしやすいんだね。覚えとこっと。……というわけでストーカーよくないさん、わかったかな? 見事解決おめでとー!」
「オーッホッホッホ! おととい来るがよろしいですわ!」
「うん、またのお便りお待ちしてマース! ――さてさて続きまして、今度は会場にお越しの人にお悩みを伺ってみましょー! ではそちらのボブカットが可憐でフレッシュなあなた、どうぞ!」
「わ、私……? あの、悩みなんて特には……というか急な話でよく分かっていなくて……」
「私たちなんで集まったんだっけ? なんで急に相談室?」
「フフ……それは芳野さんが説明してくれますわ」
「は~い。薬師堂先輩、かれんたち、前にもこんな風にいろんなチームのみんなで集まっておしゃべり会をしたんですよ。かれん、またやりたいなって楽しみにしてたんです!」
「そうなんだ! それでチームの垣根を越えて、悩みを相談しあったってこと? 楽しそう!」
「か、香蓮ちゃんと私は前も一緒のグループで……」
「たのしかったよねぇ」
「うん……須藤さんに話を聞いてもらって」
「あら、千彗子のグループでしたのね。千彗子なら素晴らしいアドバイスをしたに違いありませんわ」
「あ、はい……! お世話になりました」
「フフフ、さすが千彗子。リーダーとして頭が高いですわ!」
「惺麗ちゃん、鼻じゃないかな。鼻が高い」
「あたまが高いのは、その、すみません……」
「背は高くても腰は低いんだね」
「頭が下がるね」
「下げる必要はありませんわ。高身長は真似のできない武器、何を謝るというのです」
「いろいろ誤解してる!」
「そのような特別を持って生まれたこと、誇りにお思いなさい――フレッシュなあなた」
「あ、はい……すみません……」
「鳴宮さんだよ~。鳴宮柚葉ちゃん」
「そう、鳴宮……聞いたことがある名前ですわ。鳴宮さん、妹がいらっしゃいませんこと? 背の小さい、とても元気のいい」
「すみません……それ、お姉ちゃんです」
「あら失礼――それもまた優れた武器ですわね、フフ」
「ねえねえ九条院さん、もしかしてだけど、本題からずれてる?」
「はいはーい、話を戻して戻して。柚葉ちゃんもかしこまりすぎることないよ? 惺麗ちゃんと同学年なんだし、リラックスしてね」
「うそ、年上かと……。すみま――ごめんなさい」
「オーッホッホッホ、構いませんわ! それで、鳴宮さんの悩みはなんですの? わたくしがまるっと解決して差し上げますわ」
「悩みなんて、そんな大げさなものじゃないけど……今朝、ちょっとお姉ちゃんとケンカしちゃって気まずくて。何て言って仲直りしようかな、って……」
「ケンカの原因はなんだったの?」
「美柑お姉ちゃん、いま三年生なんですけど……私が卒業するまでに姉離れしないとねって言われて、つい言い返しちゃったんです。姉離れできてるって……心配、かけたくなくて」
「やさしいねぇ」
「優しいねー」
「そしたらお姉ちゃんが、全然できてないって。それだけじゃなくて『早くあたしを安心させてほしいな』って言ったから、ちょっとだけムキになっちゃって……」
「それでケンカになっちゃったんだ?」
「はい……しかも、そのあとお姉ちゃん、慰めにきてくれたんです。プレゼント持って……。これじゃ本当に姉離れできない子みたいだなって思ったら……素直になれなくて……」
「ええっ? プレゼントは受け取ってから考えるよ、私なら。いらないものだったの?」
「ううん、ずっと欲しかったものでした……すごく、迷いました。でも結局欲しいって言えなくて……」
「素直になれなかったんだねー。柚葉ちゃんの性格だね」
「鳴宮さんも柚葉ちゃんも、ふたりとも大切同士なんだねぇ。惺麗ちゃん、どうしたらいいかな?」
「簡単ですわ! 面と向かって言いづらいなら、他の方法で表現すればいいのです。つまり――」
「つまり、ダンス?」
「いえ、メールを送るのですわ」
「意外と普通だ!」
「かれんもそれがいいなぁって思うよ~。さっそく送ってみようよ!」
「でも……なんて書いたら……」
「そうだねぇ。いろいろ悩んじゃうと思うから、単刀直入に、やっぱりプレゼントちょうだいって書いたらどうかな?」
「善は急げですわ!」
「わ、わかった……『美柑お姉ちゃん、さっきはごめんなさい――』」
「ところで、薬師堂さんは姉妹でケンカしたときはどっちが先に謝る?」
「どっちが先ってことはないかも。だいたい一緒に謝って仲直り!」
「たとえば、どんなことでケンカするんですか?」
「例えば? 例えば……晩ごはんのおかずが最後の一個になったときに」
「取り合ってケンカになるんだよね。うちも姉と妹がよくやってる」
「違うちがう。まなぶが食べていいよって譲り合ってケンカになる」
「それでケンカになるんだ!」
「思いやりですねぇ。なんだか心があったかくなりますね」
「他にも、テレビで何を観るかってなったときに」
「チャンネル争いだよね。あるある」
「まなぶの観たいのみていいよって譲り合ってケンカに」
「なるくらいなら、自分が観たいの見たらいいじゃん!」
「なかよしさんですね!」
「まなぶって昔は体が弱くて、いろいろ助けてあげないと――って小さい頃に思ってたのが続いてるのかも。まなぶの方は、たぶんお姉さんだから助けてあげないとって思ってて」
「姉妹の絆、なんと素晴らしいのでしょう……まるでわたくしへ向けてくださるお兄様の優しさのよう。お兄様はいついかなるときもわたくしを優先してくださるのですわ」
「かれんのおにいちゃんにも見習わせたいよ~! かれんのおにいちゃん、『おかずあげる代わりにあとで一緒にテレビ見よう』なんて言うんだよ。せこいにもほどがあるよね!」
「あはははっ」
「――あ。返事がきました。美柑お姉ちゃんから」
「おおっ。仲直りできそう?」
「ええと……はい。大丈夫そうです。お姉ちゃんも謝ってくれました。あとお姉ちゃんのカチューシャ――プレゼントもくれるって」
「柚葉ちゃん、よかったねぇ」
「うん……! 相談して、よかったです……九条院さんもみなさんも、ありがとうございます」
「フフ、わたくしはただアドバイスしただけ。解決したのは鳴宮さん、あなた自身の勇気ですわ」
「おっ。決め台詞だ」
「まさかホントに解決するとはねー。さすが惺麗ちゃん!」
「マジメな顔の九条院さん、かっこいいね~!」
「九条院さん……またなにかあったら、相談してもいい、かな?」
「もちろん。おととい来るがよろしいですわ!」
「うん、それはこういう時には言わないんだよ」
「オーッホッホッホ! わたくしの評価がこいのぼりですわ!」
「うなぎのぼりだね~」
「そうだ惺麗ちゃん、ステラ・エトワールのみんなの悩みも訊いてあげたら?」
「いい考えですわ! さっそく千彗子と晶のところに行きましょう!」
「面白そうだからついていくねっ」
「それじゃ、お開きかな? 九条院さん、最後に一言」
「ええ――お悩み相談室、これにて終了ですわ!」
「おつかれさまでした~」

–END–

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